「イケメンやけど子どもみたいな人やって、看護師さんたちが言うてはったとおりや。怖がりやな、あなた。うちのパパが診てるのに、治らへんはずないやん。だいたい、穢れとか呪いとか、あるわけないわ。歴史の勉強してはるから、物の考え方も古いん?」



さすがにムッとした。


子どもはどっちだよ? その制服、中学のだろ?


確かにおれは今いじけててカッコ悪いかもしれないけど、体を壊して入院して平然としていられる人間がいると思う?


いろいろ考えてしまって気分が沈むのも当然だろ。



「あのさ、近すぎ。可能性は低いとしても、感染して発病する人間もいるんだ。おれみたいにね。きみも近寄らないほうがいい。暗くなる前に、子どもは家に帰りな」



「子ども扱いせんといて。うちは絶対、うつらへん。賭けてもええで」



「賭けるとか何とか、そういう問題じゃないだろ。とにかく離れてよ。自分が毒ガスでも吐いてる気分なんだ。いや、おれ自身が黴菌《ばいきん》にでもなった気分、かな。自分自身が気持ち悪くて、近寄られたり触れられたりしたくない。おれに構わずに、どっか行ってくれよ」