……本当は気づいてた。

龍成が帰ってきた瞬間から。


いつもはしない香水の匂いがしたの。女物の香水の匂いが。

龍成のお母さんじゃない、もっと若い、もしかするとわたしよりも若い子がつけるような香水。


前にひかりがつけていたものと同じだったから気づいた。

これ、独特だし結構きついから移りやすいんだよね。


……どこでつけてきたんだろう。


龍成は仕事の時はほぼ香水をつけない。だから他の誰か。

普通に考えると仕事相手だけど、若い女の子が仕事相手になることってあるのかな。

ないこともないだろうけど……。


こんな詮索しないで直接聞けばいいのに。馬鹿だね、わたし。

一人でこうして悩んでたってどうしようもないでしょ。時間の無駄だよ。


だけど、怖いってのもあるの。


……だって、だってね、遅くなるからって龍成はわたしを実家に帰させたんだよ。その時点で少なからず心配だったの。