「綺麗だよ」

「ありがとう」


わたしも涙ぐみそうになる。誤魔化したくて俯いて屈んだ。

上がっていたベールを、お母さんにおろしてもらう。


その一つのシーンさえ、胸を熱くさせる。


「転ばないでよ」

「わたしよりお父さんでしょ」

「そうだな」

「華乃、お父さん、しっかりね」

「うん」


お母さんが参列席に戻っていく。

いよいよだ。胸が更に熱くなる。


落ち着けと念じながらお父さんと腕を組んだ。


「右足からね」

「み、右だな?」

「やだ、緊張してる?」

「だ、大丈夫だ」

「うわ……。」


お父さん、危険かも…。わたしも緊張してるし、転ばなきゃいいな。


すると入場曲が流れ出した。


──わたし達の結婚式が、今、始まる。