ヤバい、見つかる―――
そう思ったけど、屋上に逃げ場所なんてある筈もなくて。
 たった1つしか無いドアが、
開いた。
 「っ!!」
 必死に隅っこで小さくなる。
 運が良ければ、その人が特に詮索もせずに帰ってくれれば、乗り切れる。
 だったけど。頭の中では。
 「…さっきの歌。あんた?」
 「!」
 急に声をかけられる。
 いつの間にこんな近くに…
 諦めて、立ち上がって彼の方に向き直る。
勿論、何も言わないけど。
 すると、相手はもう一度同じ事を聞いてきた。
 「なぁ、さっき歌ってただろ?」
 「………」
 すると、彼は急にむすっとした顔になっていく。
 「さっき歌ってたんだから、会話くらいできんでしょ?返信くらいしろよ」
 もう、逃げるのは無理みたい。