気づけば、また唄っていた。
さっきの歌を。
 けれど、今度は悲しかった。
会いたいよ。会いたい。君に。
涙がホロリと頬を伝う。
熱い。冷たい風で冷えた私の頬と違って。
 「?!」
 突然、誰かの来る気配がした。
しまった――聞かれたかも。
急いでウィッグをつけ、眼鏡をかける。慌てて瞳の色も変える。
けれど、さっきの唄の魔法がかかったのか…
 私は、彼と出会うことを避けられない運命だった。