彼の顔が、益々曇ってゆく。
 「…何で俺に話すんだよ?」
 「わからない」
 「…わからない?」
 「全てを話した訳じゃないし。許容範囲だから。ただ、広めるのはやめて」
 「…お前変な奴」
 「…そう?」
 これには、本気で首を傾げた。
 すると、彼はフッと笑って。
 「…やっぱ無表情」
 …それは仕方ない。
 笑いかたもわからないんだから。
 だいたい、そのどこで笑うツボがあったというのか。
 突然彼は、またもとの顔に戻って聞いてきた。
 「…そういえば、お前名前は?」
 …何で名前聞く?
 「…何で」
 「何でって…お前ほんと変な奴。
 いいから。俺はレオ。お前の名前は?」
 レオ。レオ、ねぇ…
 どっかで聞いたことある気もするけど…
 「…チェルシー。…名前聞いても意味ないんじゃない?もう会わないだろうし」
 そもそも、普通に会話したの、レオが久しぶりなんだけど。
 けれど、彼は、は?というようにこっちを見てきて。
 「会わねぇの?」
 なんて言ってくる。
 「…………」
 返事のしようがない。
 会うつもりだったのか、彼は。
 「…目立ちたくないって言わなかったっけ?」
 「あー…そっか、そうだな…」
 彼は、少し残念そうにする。
 私はできれば関わりたくないし。
 普通に話してくれたのはありがたいけど、ごめん、レオ。
 「そーゆーことだから。もう関わらないで」
 レオが何か言おうとしていたけれど、私は無視して、屋上を後にした…