ぽつりとこぼした呟きは、冬の空に溶けることなく頭にこだまする。
俯く視界の端で、のんちゃんが目を見開くのが見えた。
「それはまた…えらい急やな。」
「そう?」
ーー2月14日。
今日から数えて、ちょうど1週間後に迫った日。
「その日に、爽とちゃんと話そうと思って。」
いつの間にのんちゃんの住むアパートに着いていて、私はのんちゃんの後に続いて部屋に滑り込む。
「そっか。」
それだけ言って、のんちゃんはキッチンの方へと消えた。
しばらくして、水が沸騰する音が聞こえる。
「ーはい。」
「ありがと。」
湯気の立つマグカップを反射的に受け取ると、のんちゃんは私の隣に腰を下ろした。



