【短】チョコにとかして






途端にあたりが静かになって、空気が一気に冷えた。


……雪、やっぱり降るのかも。




ぼんやりとそんなことを考えていると、爽が一歩、こちらへ踏み出した。






「…なんでそういう考えに至ったのか、教えてくれる?」



「……っ、だって…っ」





俯いているから、爽が今、どんな顔をしているのかはわからない。

だけど、私に向けられた声があまりに優しすぎたから。




泣きそうなのがバレないようにと細心の注意を払っていたのに、全部無駄じゃないか。



泣いちゃ、だめだ。

ここで私が泣くのは、ズルすぎる。



だけど、どれだけ止まれと願っても、一度溢れてしまった私の気持ちは、両目からぼろぼろとこぼれ落ちて止まらない。





「……俺よりも好きな人ができたとか?」


その言葉に、私は弾かれたように顔を上げる。



違う。違う、違う。


私は子供みたいに、ただ首を横に振った。





「っ、違う…っ!私は、爽が好き。きっと、爽以上に爽のことが好きよ。これから先だって、爽のことしか見えない!

だけど、…爽は、違うんでしょう…?」




私よりも好きな人ができたのは、爽の方じゃない。