祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

 こうして自分を客人として城に置いてくれたのも、自分に優しくしてくれたのも、すべてはこの瞳の持つ力のためだったのだ。

 確かめるには、手の内を明かさなければならない。だから回りくどいながらも、こうして確証が得られるまで自分は泳がされていたのだ。

 分かってすっきりするどころか、切られたような鋭い痛みを感じるのはどうしてなのか。リラは自分の感情が一気に沈むのを感じた。それは声にも表れる。

「分かりました、陛下。もしも次に悪魔がっ」

 そこでリラはまったく予想もしなかった展開に目を丸くした。いきなり頬に手を添えられ強引に王の方に向けられたかと認識する間もなく、唇が重ねられる。何度目か、だが、この独特の感触に慣れることはまだない。

「その名を口にするな」

 たっぷりと間があってから唇が離され、至近距離で王の瞳に捕まる。怖いくらい真剣な強い眼差しと厳しい声。闇よりも深い黒、青みがかっているその色がリラの心を放さない。

「陛、下」

 弱々しく呼びかける。しかしそれはなんの抵抗にもならなかった。触れられたところが熱く、心臓が早鐘を打ち出す。

「奴らに惑わされない一番の方法は、その存在を信じない、その名を口にしない、そして思いっきり蔑んでやることだ」

 そう言って、ヴィルヘルムはゆっくりとリラを解放した。

「滑稽だな。実際に対峙する我々は、その名を呼ぶことはしないのに、人々は易々とその名を口にする。そこにつけこむ隙を与えていると言うのに」

「申し訳、ありません」

 知らなかったとはいえ、リラは静かに謝罪の言葉を口にした。自然と王に触れられていた箇所に手が伸びてそこを撫でる。