祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

「リラ」

 ゆっくりと確認するようにリラの名前を呼び、その顔を見る。

「本当に、見えるのか?」

 リラは自分の瞳に映るヴィルヘルムの姿を、じっくり見たい気持ちもあったが、目の奥が熱くてなんだか苦しい。

 少し髪が伸びて、どこか凄みも増した気がする。けれど、艶のある黒髪、それと対照的な白い肌。くっきりとした目鼻立ち、そして青みがかった黒色がリラを見据えている。リラのよく知るヴィルヘルムその人だった。

 リラがゆっくりと頷くと、ヴィルヘルムは再度、リラをきつく抱きしめた。リラもためらいがちに王の背中に自分の腕を回す。

「もう二度と離さないし、誰にも渡さない。お前は私のものだ」

 耳元で決意したように強く言われ、ゆっくりと回されていた腕の力が緩められた。切なそうなヴィルヘルムの顔が、リラをじっと見据える。

「愛している、リラ。私が本当に望むものを、叶えてくれないか」

 ヴィルヘルムから視線を逸らさず、その言葉を聞いたリラの瞳から再びぽろぽろと大粒の涙が零れ始めた。

「私、欲張りなんです。ヴィルが生きていてくれれば、幸せでいてくれたらそれでいいと願っていたはずなのに。それなのに、今はそばにいてほしくて、これからもそばにいたくて、できれば……私だけを見てほしいって思ってる」

 リラはぐっと涙を堪えて笑顔を作る。その顔は今までヴィルヘルムが見た笑顔の中で一番美しかった。

「それに、私はとっくにあなたのものですよ。お慕いしています、ヴィルヘルム陛下。この気持ちは、嘘偽りなく私だけのものです。だから、どうかずっとそばに置いて愛してください」

 ヴィルヘルムが指でリラの涙を拭う。そして、ゆっくりと顔を近づけて、形のいい唇に自分のを重ねた。至近距離でふたりの視線は交わり、ヴィルヘルムはそのまま口づけながらリラを後ろに倒した。