祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

「久しぶりに見る景色はどうだ、リラ」

 そこでふたりのものではない声が部屋に響き、ヴィルヘルムはとっさにリラを庇うようにして身構えた。リラの目には、まったく変わることのない男が映っている。その赤い瞳はとくに目に焼きついていた。

「ルシフェル」

「リラになにをした?」

 凄みをきかせた声でヴィルヘルムが問うも、ルシフェルは相変わらず妖艶な笑みを浮かべていた。

「そう、がなるな、ヴィルヘルム王。お前の愛しい娘の目が見えるように少し力を貸してやったんだ」

「どういうこと!?」

 叫んだのはリラだ。急に視界が捉える光景に脳が処理に追いつかず、思わず顔をしかめる。けれど、間違いなくリラの瞳は見えるようになっていた。

 さらに、その瞳の色は紫だ。混乱するリラの代わりにヴィルヘルムが尋ねる。

「なにを対価にする気だ。お前らが善意でこんなことをするはずがない」

「さすが、話が早いな。なに、考え方を変えたのさ。リラ、お前の目は厄介だった。生ける者以外を映し、我々の正体さえも見破ってしまう。けれど、逆にそれを私の役に立ててもらおうと思ったのさ」

「冗談じゃない、お前らなんかにリラは渡さないし、接触もさせない」

 祓魔の構えを見せるヴィルヘルムをルシフェルは軽く牽制する。

「おっとやめておけ。それに、これはお前にとっても悪い話ではないぞ」

 ルシフェルの言葉にヴィルヘルムの眉がつり上がる。ルシフェルは気にせず続けた。