祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

「どうしてそういう考えに至る? そんなことをする人間がいるわけないだろ。国王の妃になる相手に」

 何気なく紡がれた言葉にリラは固まった。空耳を疑ってしまうほどだ。また自分はなにか考え違いをしているのか。混乱しているリラに対し、ヴィルヘルムは軽くため息をついた。

「エルマーが、先に勝手なことを言っていたが、私はもうお前以外に望む人間はいない」

 自分の考えが間違っていなかったことを確認すると同時にリラは狼狽えはじめた。嬉しさよりも恐れの方が大きい。

「そ、そんな、私には分不相応です。それに目も不自由ですし。皆さん納得しませんよ」

「ずっと王家を苦しめていた呪いを解いて、ズーデン家の末裔であるお前を反対する人間なんていないだろ。ズーデン家のことも、他の方伯たちと話して、ちゃんと公表する。なにより私がお前以外とは結婚する気も世継ぎを作る気もないと言ってるんだ。王家をここで途絶えさせる気か?」

「なんで、私のせいになさるんですか!?」

「お前次第だからだろ。それに『どんな存在でもかまいません』と言わなかったか?」

「それは……」

 顔を赤らめながら反論するリラに、ヴィルヘルムはなにかが溢れだしたように声を殺して笑いだす。それをリラは気配で感じ取った。

「……陛下、笑ってらっしゃいます?」

「そうだな」

 いつもなら否定するところだが、ヴィルヘルムは素直に応じた。ずっと探していたリラと、無事に再会できて、こんなふうに軽口を叩き合っている現実が愛おしい。