祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

「いいですか。これは彼女が“自分から言い出した”ことなんですよ、フェリックス“陛下”!」

 心臓が破裂しそうに激しく脈打つ。息がうまく吸えないのか、吐けないのか。状況についていけずに、告げられる真実だけが胸を刺していく。

 そのとき、慌てた様子で乱暴に部屋のドアが開かれた。ヨハンがたしなめるも、現れた家臣の顔は真っ青だった。

「殿下、大変です。広間でズーデン方伯が!」

 その言葉に、フェリックスは着の身着のまま飛び出していった。

 ローザに二度と会えない? 彼女のせい? 冗談じゃない。そんなこと許されるわけがない。そんなことが……。

 広間の扉を力いっぱい開けると、そこには信じられない光景があった。多くの家臣、国王の訃報を聞きつけて弔問に訪れた貴族たちが、なにかを取り囲むようにして激しく叫びあっている。

 その真ん中にいたのは、両腕を後ろで縛られ、目隠しをされて、膝を折っているひとりの女性だった。

「ローザ!」

 フェリックスの叫び声に、辺りは沈静し、一斉に視線が集中した。そしてフェリックスからローザまで分かれるようにして人の垣根ができる。

 急いでローザの元に駆け寄ろうとしたフェリックスの前に、ある人物が立ちはだかった。

「これは、これはフェリックス殿下、いえ、フェリックス陛下。王家への呪いを跳ね返し技、見事でございました」

「オステン方伯、なにを……」

 オステン方伯は深い眼差しでフェリックスを見据えた。その目が語る真意を悟り、フェリックスは微かに首を横に振る。そんなふたりに次々と訴えかけるような言葉が浴びせられた。