祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

「今回の件は、ズーデン方伯が両親を亡くしたことを逆恨みし、王家に呪いをかけたことが原因だ。あなたはそれを祓魔の力を使って跳ね返した。いいですね?」

「なにを……」

 自分の頭の回転はそれほどまで遅いと思ったことはない。しかし、このときばかりはフェリックスは自分の側近が告げた言葉の意味がまったく理解できなかった。ヨハンはフェリックスから目を逸らすことなく、再度告げた。

「すべてはズーデン方伯の起こしたこと。王家は被害者だ。あなたはそう告げるんです」

「馬鹿言うな! ローザのおかげで俺もフィリップも助かったんだぞ。それを、なんで、どうして彼女が悪者になるんだ!?」

 拒絶するようにヨハンの手を払いのけ、フェリックスは声を上げる。こんなにも感情を露にするのは、いつぶりなのか。それでも、ヨハンはあくまでも冷静だった。

「さっきの件は、すでに騒ぎになり知られるところになっています。それが国王自らが悪魔と契約し、血を引く者を呪ったなどという内容が明るみになれば、王家の信頼は地に落ちます。王政の崩壊だ。そうなると国はどうなります? 大混乱に陥り、そこへ他国にいいように攻め入られてもしょうがない」

「だからって」

 激昂するフェリックスの肩を再び、ヨハンが掴んだ。

「彼女は悪魔のすべてを封印することはできなかった。呪いも抑えられたが、消えたわけじゃない。確実にあなたの中に残っているんです。悪魔をそれぞれに宿したあなたたちが接触することは危険だ。だから、あなたたちはもう二度と会うことができないんです」

 後頭部を鈍器で殴られたような衝撃。フェリックスはこれでもかというくらい目を見開いた。そんなフェリックスにヨハンははっきりと告げる。