祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

 フェリックスが目を覚ますと、見慣れた天井が目に入る。急いで身を起こせば、そばには側近のヨハンがいつもよりも、ずっと厳しい顔をして立っていた。

「ヨハン、フィリップは!?」

 意識を失う前の光景を思い出し、掴みかかる勢いで異母弟のことを尋ねる。

「フィリップさまもご無事です」

「そうか……俺は一体」

 ほっと息を吐いたのも束の間、まだ重たい頭を支えるようにしてフェリックスは項垂れた。記憶が曖昧で体もまだ重い。まるで頭に靄がかかっているようだ。そんなフィリップにヨハンは躊躇うことなく真実を告げた。

 悪魔に憑かれていたのも、フィリップの命を奪おうとしたのも、まさかの自分の父親の仕業だということにフェリックスは少なからずショックを受ける。

 父親として可愛がってもらった記憶などほとんどない。フェリックスにとってヨハネス王は父親の前に常に国王だった。だからといって……。

 そこでフェリックスは、はたと気づいた。

「俺はどうして、無事なんだ? 憑いていた悪魔はどうなったんだ?」

 その問いかけにヨハンは眉間の皺をさらに増やして深くさせた。時間にしてたった数秒の沈黙、それでもフェリックスにとっては、とてつもなく長い時間に感じられた。ようやくヨハンが重い口をおもむろに開ける。

「ズーデン方伯が、自分の中に、あなたに憑いていたものを取り込んでくださいました」

「ローザが!?」

 そこまで言うと、ヨハンは無礼を承知でフェリックスの両肩に手を置いた。強い力、迫力ある表情。どこか泣き出しそうな顔でヨハンはフェリックスに言い聞かせるように告げた。