祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

 フェリックスは少しずつ、政治に前向きに取り組むようになった。その姿に側近のヨハンが、槍でも降るのではないかと本気で心配したほどだ。

 国王の容態があまり芳しくないことを受けて、ようやく後継者としての自覚が出てきたのだろう、と周りは勝手に納得していたが。

「お疲れのようですね、殿下」

 ヨハンが労るように声をかける。フェリックスは朝から体調がすぐれず、どこか肩が重たかった。振り払うように肩を回してみるものの、あまり改善はされない。

 根を詰めすぎでは?と眉間に深い皺を寄せて訊いてくるヨハンにフェリックスは苦笑した。

「そうでもないさ。それに、俺は見えているのに、どうやらなにも見えていなかったらしい」

 ヨハンには意味が理解できず、尋ね返そうとしたが、それを制するようにフェリックスは立ち上がった。いつも午後の決まった時間に休憩と称しては、必ず抜け出していく。

 今日もその時間らしい。それを黙認できるのも、彼がまだ国王ではないからだ。

 フェリックスが薔薇園に来ると、ローザは先に来て腰を下ろして自分を囲んでいる薔薇たちを堪能していた。葉の間から降り注ぐ太陽を浴びて、なんだかそこだけ違う空間のようでフェリックスはつい見惚れてしまう。

「カイン?」

 気配を感じて、ローザは顔を向けた。もう少し見ていたかったという気持ちを抑えて、近づいていく。

「毎日飽きもせず、律儀な奴だな」

 それは自分にも言えることなのだが、目が見えていないローザにとって、なにが楽しいのかフェリックスには理解できない。隣に腰を下ろすと、ローザは優しく笑った。