祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

 けれど、なんとなくフェリックスはローザに訊いておきたかったのだ。するとローザは少しはにかんだ顔を見せた。年相応の少女のようなあどけなさだ。

「殿下が私を選んでくださるとも限らないし。でもお会いできるなら、もしも結婚していただけるなら、たくさんお話をしたい。たくさん殿下のことを知って、私のことも知ってもらいたい。そうしたら私、殿下のことをきっと好きになると思う」

 そこまで言ってローザは自分の顔を両手で覆う。よく見れば、耳まで真っ赤だ。フェリックスが軽く息を吐くと、ローザが急に慌て出した。

「今の、今のこと、殿下には内緒にしておいてね」

 今まで見たことがないような顔で、必死に訴えかけてくるローザが、なんだかおかしくて、フェリックスはつい意地悪をしたくなった。

「約束できないな。俺は口が軽い」

「カイン~」

 さらっと告げると、ローザは絶望的な表情になる。すぐさま、すがりつくような泣きそうな顔になった。その顔を見て、ついにフェリックスが吹き出す。

 こんなふうに声をあげて笑うのは久しぶりだった。そんなフェリックスの様子にローザは呆然となる。

「カイン、笑ってるの?」

 その問いにフェリックスは答えない。代わりに、

「お前にフェリックス殿下はもったいないな」

 とだけ返した。ローザは意味が分からなかったが、深くは追求しなかった。今は、目の前の男が笑っているのを感じ取れただけで十分だったから。自然とローザの顔にも笑みが浮かんでいた。