祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

「お会いしたいな、フェリックス殿下に。お気持ちが分かる、なんておこがましいけれど。でも、殿下も心の整理がついていないだけで、きっとそのときが来たら、前を向けるはずよ」

「買いかぶりだろ。会ったこともないのに、随分と言い切るんだな」

 刺々しく告げるフェリックスにローザは声をあげて笑った。その顔から目が離せなくなる。

「カインはフェリックス殿下のことが、あまり好きではないのね。でも、殿下は両親が亡くなったとき、わざわざ哀悼の意を添えて花を贈ってくださったの。その気遣いが有難くて、とても慰められたわ。同じように悲しんでくださることが。殿下はお優しい人なんだと思う」

「ちっ」

 違う!と喉まで出かかった言葉を、ぐっと俯いてぎりぎりのところで嚥下する。目を閉じて思い出すように話すローザに、フェリックスの胸が痛みはじめた。あれは優しさでもローザを思いやったわけでもない。

 ただ王家の人間として、父親みたいに割りきることも、謝罪することもできず、罪悪感から起こした行動だ。それを説明することさえできない。

 けれど、自分の贈った花が少しでもローザの慰めになったのなら、救われたような気分だった。慰められているのは自分の方だ。

「それにしても、会ったこともない、好きでもない男と結婚だなんて、それでいいのか?」

 湿っぽくなりそうな雰囲気を吹き飛ばしたくて、フェリックスはわざとらしく話題を変えた。王家はもちろん、身分の高い貴族は、親の決めた相手と結婚することなんてざらにあり、結婚が決まって初めて会う場合も多々ある。