優しい声と眼差しに、メラニーの瞳から、再び涙が零れはじめる。耐えるような、辛そうな泣き方ではない。声をあげて年相応に泣く姿は、どこか安心させるものがあった。

「お前も、メラニーのことを思うなら、もう少しやり方を考えるんだな」

 魚の瓶をドゥムハイトに投げてやると、それを嘴で捕らえて丸呑みし、砂が舞うように姿を消していった。

 オスカーはヴィルヘルムたちに何度も頭を下げた。正直、まだ夢見心地で事実を受け入れることは難しいが、メラニーの話すことをちゃんと聞く、ということだけは、しっかりと刻み込まれたようだ。

 妻のカミラもけっしてメラニーのことを嫌っているわけでも、恐れているわけでもない。兄と同じように、自分の殻に閉じこもり、いなくなってしまうのではないか、という強い恐れを抱いているだけなのだ。

 メラニーはメラニーで実の親子でもないのに、という後ろめたさも感じていたらしい。たくさんの話をする必要が彼らにはある。

 ゴットロープが守護魔神を呼んだのは、あくまでも目に見えないものたちからメラニーを守るためだ。そしてオスカーたちも目に見えないなにかから、メラニーを守ろうとしていた。

 メラニーはちゃんと愛されている。別れ際のメラニーはあまり喋りはしなかったが、それでも、その表情はどこか明るかった。そんなことがリラには嬉しい。

 全部信じてくれなくてもかまわない。ただ、うんうんと頷いて話を聞いてくれる存在がいることは、きっと大きな力になるはずだ。不思議そうに、紫色の瞳を改めてじっと見つめてくるメラニーに、リラはにこりと微笑んだ。