祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

 メラニーのたどたどしい説明を受けてから、ヴィルヘルムは、全員をこの部屋に呼んでくるように、とエルマーに伝えた。

「なにをなさるつもりですか?」

 エルマーが部屋を出たところで、リラが遠慮がちに尋ねる。すると、ヴィルヘルムはとんでもないことを、なんでもないかのように告げた。

「ここにいる守護魔神を呼び出す」

「え!?」

 リラはつい声を上げてしまった。ヴィルヘルムは逆にリラの反応に驚いた顔を見せる。

「なにをそんなに驚く? 言っただろ、私は聖職者じゃない。奴らを祓う術を知っているように、呼び出す術も持ち合わせている」

 まさかの展開にリラは愕然とした。ヴィルヘルムはさっさと招霊の準備を始めている。隠し部屋からチョークや炭を拝借し、部屋の中央に手際よく円を描いていく。

 書かれている言葉はリラにはまったく理解できないものだったが、絨毯の上とは思えないほど、くっきりと惹きつけられるような円は、不思議な雰囲気を醸し出している。

 一通り描き終えたヴィルヘルムは立ち上がり、粉を払うように、手を鳴らした。

「ただ、どんなものでも呼び出せるわけじゃない。曜日、時間、方角、生贄、そして呼び出す相手の名前が必要だ。“今日は日がいい”から助かったな」

 ヴィルヘルムがここに来たときの発言を思い出す。そして、部屋の扉を閉めて、円陣の前にヴィルヘルムは静かに立った。

 さっきまで窓から好きなように風が入って来ていたのに、まるで意志を持つかのように、それがぴたりと止まる。