祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

 そこでリラはなんとなく感じていた違和感が繋がった気がする。あのリラの瞳に映った黒い手は、我々に危害を加えようとしたわけではない。

 メラニーから注意を反らせたかっただけなのだ。だから、食堂で残された文字を見た時も、嫌な感情は伝わってこなかった。背中に冷たいものが走る感覚も。それらが意味することを合わせれば

「ここにいるのは、守護魔神と呼ばれるものだろう」

「そんなものが。初めて聞きますね」

 その名を聞くのは、リラはもちろんのこと、エルマーでさえもだった。

「私も相手するのは初めてだ。奴らの中に、極まれに人間に対し好意的に接するものもいると聞いたことはあるが……。ゴットロープの本棚に並んでいたのは、悪魔学の中でも、特に招霊術に関する書物が多かった。どういう経緯かは知らないが、どちらにしろ、メラニーに話を聞く必要がある」

「危険です! 下手に接すれば、またなにか起こるかもしれない」

「承知の上だ。しかし、これ以上の情報を得るためには、彼女に話を聞くしかないだろ」

 エルマーは眉を寄せて、しばらく口を閉ざした。そして、考えを吐き出すかのように長い息を吐いた後、とりあえず自分も付き添ったうえで、メラニーだけをこの部屋に連れてくるということで話はまとまった。