魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



そう結論付けてまた水を口に含めば、蓮様はじっと私を見つめた。


「嘘つき」

「えっ?」

「肩押されてたじゃん。普通に『相手のせい』でしょ」


見られていたらしい。
途端に気恥ずかしさがこみ上げてきて、私は苦笑する。


「まあ……でも、可愛らしいものですよ。確かに押されましたけれど、その後つまずいて転んだのは、私のせいです」

「へえ」


今の相槌は、ちょっと冷めている。
そんな分析を呑気に行っていると、蓮様の手が私の腕を取った。

え、と戸惑いの声を上げる間もなく、彼が私の服をまくり上げてしまう。


「これが、可愛らしいものなの?」


手の平から手首、肘にかけてできた傷。消毒が少し染みたけれど、ものすごく痛いわけでも、大きいわけでもない。
私が楓のようなお嬢様だったら、心配されるのかもしれないような、そんな程度の。


「……そう、ですね。擦り傷で済んで良かったです」

「痕が残ったらどうするの」

「腕ですし、あまり見えませんよ」

「腕じゃなくて、もし顔だったら、どうしてたの」


どうして彼は、そんなに厳しく追及してくるのだろう。
私のことというか、周囲のことにはさほど興味がなさそうなのに。なぜ真剣な顔で質問を重ねてくるのか、全く分からなかった。


「腕でも顔でも、同じです。仮に抵抗したとして、彼女たちに傷をつけてはいけませんから」