魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



どういうことだろう。何か本格的に嚙み合っていない気がするのだけれど。
私の質問に、彼は「はい」と頷く。


「今現在、執事を募集しております」

「ハウスキーパーとか、メイドとか、そういったお仕事は……」

「間に合っておりますので」


そんなのありですか――――!?
心の中で大絶叫したはいいものの、事態が収束するわけもなく。


「きちんとご説明できていなかったようで、申し訳ありません。ご希望の職種でないということでしたら、恐れ入りますが本日はお引き取りを――」

「ちょ、ちょっと待って下さい」


板に水を流すかのごとくつらつらと話を進める彼を、たどたどしく遮る。

だからこの人、私を見て不思議そうな顔をしたんだわ。執事なのに、女が来たから。
ようやくさっきの謎が解けたところで、私は再び口を開いた。


「受けます。オーディション、受けさせて下さい」

「ですが、」

「お願いします!」


今ここですごすごと帰るわけにはいかない。父には啖呵を切って出てきてしまったのだ。
正直、合格できる自信なんてないけれど、それでもやるだけやってみたい。


「分かりました」