ものすごく温かいわけでも、優しいわけでも――はたまた、甘いわけでもなく。
彼はただ、そうするのが当たり前とでもいうような仕草で、私を窘める。
恥ずかしい、情けない。ずっとそんな感情が先行していたのに、彼があまりにも普通だから、むしろ喚く方がおかしいのだとすら思えてきた。
そうして彼に運ばれ、五宮家に帰ってきた時、木堀さんが目を真ん丸にして竹倉さんを呼びに行った。
私としては竹倉さんにこの状態を目撃されると、主人に迷惑をかけて、と怒られそうで怖かったのだけれど、結果的にそんなことはなかった。
蓮様がそのままベッドに私を横たえて、それからすぐにお医者様がやって来た。一大事みたいになってしまって、すごく居心地が悪い。
「……蓮様、申し訳ございません」
ようやく口を開いたのは、お医者様が帰って、水を一口飲んだ後。
蓮様はその間、ずっと近くにいて下さった。
「何が?」
「ご迷惑をおかけしまして……あの、お洋服も汚してしまいましたし、わざわざここまで運んで下さって」
お医者様いわく、強く打ちつけて一時的に動けなくなっているだけ、とのこと。要するに打撲だ。安静にしていればすぐに良くなるらしい。
私がもごもごと言葉を続けていると、蓮様はベッドに腰を沈めた。少しだけ近付いた距離に、心拍数が上がる。
「あのさ。君は僕を何だと思ってるの」



