魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



口ではそう言ったものの、起き上がろうとするたびに腰が軋む。
彼には先に帰ってもらった方がいいな、と思った刹那、蓮様が私の腕を掴んだ。


「痛っ……!?」


強制的に引き寄せられ、思わず声を上げる。
しかし次の瞬間、自分の体が浮いて、そのことの方にびっくりした。


「え!? 待っ――蓮様!?」

「早く診てもらった方がいい。打ち所が悪いといけないから」


背中と膝裏に回った彼の手。そしてすぐ近くにある、きめ細やかな白い肌。
彼の取った行動が突飛すぎて、頭の処理が全く追いつかない。


「蓮様、いけません! 私、いまずぶ濡れで……!」

「見れば分かるよ」

「そうではなく……! 蓮様の制服も汚れてしまいます!」


淡々と足を進める彼に抗議するも、止まる気はないらしい。
校門へ向かうまでの間、当たり前だけれど沢山の生徒とすれ違って、視線が突き刺さった。


「僕の制服のことよりも、自分の体のこと気にした方がいいんじゃない」


いやそれよりも何よりも、今度は周りからの目が痛い。
逃れたくて身を捩れば、再び腰が悲鳴を上げ、それと同時に「こら」と耳元で単調な叱り声が聞こえた。


「じっとしてて。危ないでしょ」