魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



この場に相応しくないトーンが飛んできたのは、まさにその時だった。
純粋な質問としての響きしか持ち合わせていないそれに、彼女たちが振り返る。


「五宮様……!?」


声だけで分かった。一体、誰が来てしまったのか。
だけれど、彼女たちが彼の名前を呼んでいよいよ確信し、私は項垂れる。

きっと私が来ないから、痺れを切らして歩いてきたんだろう。本来私が迎えに行かなければいけないのに、蓮様にそうさせてしまったのがまず不甲斐ない。
加えて、完全に私の都合に彼を巻き込んでしまいそうで、心底情けなかった。


「その子、転んでるけど。起こしてあげたら?」


特に追及するわけでもなく、ただ今のこの瞬間だけを鑑みた発言だ。
彼女たちも困惑した様子で顔を見合わせ、おろおろと視線を左右に振るだけである。

蓮様は数秒その様子を黙って見つめ、それから彼女たちの間を割って私の方へ歩み寄ってきた。


「大丈夫?」

「蓮様……」


噴水の傍らでしゃがみ込んだ彼は、その右手をこちらに差し出した。
恐縮しながらも、ゆっくりと腕を伸ばして上半身を起こした時。


「いっ、」


ずきん、と腰に鋭い痛みが走る。
耐え切れずに顔をしかめて俯くと、蓮様が「痛いの?」と問うてきた。


「だ……大丈夫です。すみません、いま立ちます」