思わず聞き返すと、「何か?」と逆に問われてしまった。
「あ、ええと……始めるって、何を、でしょう?」
「何を、と言われますと、オーディションですが」
「オーディション!?」
一体何の!?
驚く私に対し、更に驚いたような顔をしたのは向こうだった。
でも、こちらだって負けていない。どうやら何か勘違いをしているようだ、と慌てて私は言い募る。
「私はこちらで使用人を募集しているとのことで、伺ったのですが……」
「ええ、左様でございます。ですから、そのオーディションをこれから行うのです」
なるほど。名門一家に仕えるのだから、面接ではなくて「オーディション」と少々大袈裟な工程を踏むらしい。
納得と同時に、果たして自分は合格できるだろうか、と不安が押し寄せる。そんな私に、追い打ちをかけるような言葉が彼から飛び出した。
「執事となりますと、少々業務内容も特殊になりますので。こちらとしましても適性を図らなければならないのです」
思考停止、のち、数秒。私は呆然と呟いた。
「執事? 使用人、と書いてありましたよね……?」



