*
本当にすごい家だ。
五宮家の大豪邸を前にして、浮かんだのは何とも稚拙な感想だった。
真っ白な壁に、大きな窓。コバルトブルーの屋根が青空と同化して、どこまでも高く続いている。外から見てもわかる広大な緑の庭は、隅々まで手入れが施されていて、鑑賞にはもってこいだった。
重々しい門を押し開き中へ進むと、玄関アプローチの先にこれまた重厚な扉。その脇にあるインターホンを押して、ふう、と深呼吸をする。
「はい」
受け応えたのは男性の声だった。
僅かに緊張が走る。私は握った拳に力を込め、努めて明るく発した。
「あの、私、求人の件で伺った佐藤と申します! こちら五宮様のお宅でお間違いないでしょうか?」
佐藤――それは、私が「使用人」として働いていく上での名前と決めていた。
五宮家と比べてしまえばうちなんて大したことはないけれど、それでも一応念のため。家柄関係なく、自分の力で道を切り開きたい。色眼鏡なしに私自身を評価してもらいたい。そう思ったから。
「左様でございます。只今そちらへ伺いますので、少々お待ち下さい」
本当にすごい家だ。
五宮家の大豪邸を前にして、浮かんだのは何とも稚拙な感想だった。
真っ白な壁に、大きな窓。コバルトブルーの屋根が青空と同化して、どこまでも高く続いている。外から見てもわかる広大な緑の庭は、隅々まで手入れが施されていて、鑑賞にはもってこいだった。
重々しい門を押し開き中へ進むと、玄関アプローチの先にこれまた重厚な扉。その脇にあるインターホンを押して、ふう、と深呼吸をする。
「はい」
受け応えたのは男性の声だった。
僅かに緊張が走る。私は握った拳に力を込め、努めて明るく発した。
「あの、私、求人の件で伺った佐藤と申します! こちら五宮様のお宅でお間違いないでしょうか?」
佐藤――それは、私が「使用人」として働いていく上での名前と決めていた。
五宮家と比べてしまえばうちなんて大したことはないけれど、それでも一応念のため。家柄関係なく、自分の力で道を切り開きたい。色眼鏡なしに私自身を評価してもらいたい。そう思ったから。
「左様でございます。只今そちらへ伺いますので、少々お待ち下さい」



