魔法をかけて、僕のシークレット・リリー




執事の朝は早い。
午前五時に起床し、全体ミーティング。そのあと手早く朝食をとって、ご主人様へ提供する食事の準備をする。

キッチンはコックの持ち場なので、竹倉さんが全体指揮として見に行く程度だ。
私たちはテーブルセッティングに加え、お茶の用意などを担当する。


「佐藤、それ違う」


カトラリーを並べていると、近くで作業していた草下さんにそう指摘された。
いま私が並べていたのはナイフだ。順番を間違えただろうか、と眠い頭で考えるも、ぱっと見は何ら問題ない。


「それ魚介用のナイフだから。普通のと形違うだろ」

「あっ、本当ですね! すみません……」


確かによくよく見てみると、普通のナイフよりも刃が薄いし、くびれている。
今日の朝食では魚料理が提供されないので、これを置いておくのは不適切だ。


「ありがとうございます。教えて下さって……」

「いーえ」


草下さんは知識があるのはもちろん、基本的に取っつきやすい。一番年が近いから、というのもあるんだろうけれど、勝手に頼りにしている。


「おーい、佐藤」