そんな繋がりがあったとは。
もしかして――だからさっき、私の顔をあんなにじろじろと見ていた?
「何が目的か知らねえけど、蓮様なら婚約者がいる。ま、専属にもなれなかったみたいで残念だな」
「婚約者……?」
「あんたもお嬢様なら分かるだろ。親に決められた相手がいんだよ」
私と同じように蓮様も。政略結婚、だろうか。
それにしたって心外だ。私は何も、蓮様のことをどうにかしようと思ってここへやって来たわけではない。そこの誤解を解いておかなければいけないし、告げ口なんてされたらそれこそ即刻クビだろう。
「違います! 私はただ、夢を叶えるためにお金を稼いでおきたいだけで……」
「玉の輿ってか? あー、無理無理。あんたには悪いけど、お相手は相当いいとこのお嬢さんだから」
手をひらひらと振って宣う彼。
だから違うって言ってるのに。しかし否定を重ねても取り合ってもらえなさそうだったので、渋々諦めた。
「……竹倉さんに、言うんですか?」
「あ? 別に言わねえよ」
「どうして……」
尻すぼみになった私の問いに、森田さんは「なに、言って欲しいの?」と顔をしかめる。
「そうじゃないですけど! でも、」
「どうしてってンなもんなぁ」
面白いからに決まってんだろ。
不敵に口角を上げた彼が、堂々と言い切る。手早く片付けを終えると、そのまま森田さんは部屋を去って行ってしまった。



