真っ白な内壁とステンドグラスの対比が美しかった。差し込む光は、祝福の鐘のようだ。

支度を終えて椅子に腰掛けている私に、母は逡巡した様子で――やがて意を決した目で、口を開く。


「ねえ、百合。私は花城の人間だから、あなたと藤さんが結婚することは嬉しい。……でも、それより何より、私は百合のお母さんなの」


母がこれから何を言おうとしているのか、よく分かる。だからこそ、騙していることが辛かった。
いつも厳しい母が、最近ずっと優しい目をしているから。日に日に心苦しくなっていった。


「正直に言ってくれないかしら。百合は、本当に藤さんと結婚したい?」

「……どうしたの、今更。今日のために、お父様もお母様も協力してくれたじゃない」

「そうね。そうだった。私も、百合のウエディングドレス姿は、どんなに綺麗だろうって、ずっと楽しみだったもの」


でもね、と。母が顔をしかめる。


「今日とびきり綺麗になった百合を見たら、違うって思った。私があなたに着せてあげたかったのは、偽物のドレスじゃない」

「……何、言ってるの」

「そんな顔であなたに無理強いさせてまで、私は結婚させたかったわけじゃないの。ねえ、百合」