そう問うてから、愛想がなさすぎたと反省する。
しかし彼は気にするわけでもなく、人当たりのいい笑みを浮かべるだけだった。


「そんなに警戒なさらないで下さい。僕はただ、五宮様にご協力したいと思っているだけです」

「協力?」


悪徳商法のような語り口に、自然と身構えてしまう。
少しだけつり上がっている目を細めて、彼が言い放った。


「僕たち、結婚式をするんです」

「……は、」

「といっても、友人を呼ぶことはせずに身内だけで挙式しようと思っているので、準備自体はそこまでかかりません。一ヶ月ってところでしょう」


結婚式? 一ヶ月? 一体、目の前の男は何を言い出したのか。
文字通り固まった僕を横目に、彼は続ける。


「いやぁしかし、困ったものですね。彼女がどうにも乗り気じゃないんですよ。僕は今すぐにでも籍を入れてしまいたいのですが、さすがにそれは可哀想なので」

「何を……」

「ねえ、五宮様。彼女のこと、好きなんでしょう?」


それまでやたら棒読みでべらべらと喋り続けていた彼が、ひたと僕の目を捉えた。妖しげに口角を上げる。


「婚約の話はチャラ、今あなたは自由なはず。どうです? 結婚式に一名だけ、ゲストを招待しようと思っているんですけれど、まだその一枠は埋まっていないんですよ」