場の空気が張り詰めてきたのを感じ、私は咄嗟に手を挙げた。
一気に刺さった注目に、う、と少し尻込みしてしまう。
「私、ガキかもしれませんけど……ちっちゃい子は好きなので大丈夫です!」
「ああ!? そういうこと言ってんじゃねえんだよ! てか葵様をちっちゃい子って言うな!」
「す、すみません……!」
しっかり怒鳴られてしまった。
森田さんの機嫌は私の発言では直りそうにない――というか、悪化している気がする。
「ていうかお前、」
「佐藤です! お前ではなくて!」
「うるせー! 佐藤! その中途半端な髪型は何だ、ふざけてんのか!」
森田さんが指をさしながら指摘してくる。
私は自身の毛束を摘まみ、「これですか?」と首を傾げた。
「昼間のオーディションの時、邪魔だったので切ったんです」
「はあ? 頭イカれてんのか?」
「えっ? いや、イカれてはないと思います!」
「だーっ! 何なんだよお前! もういいわ、ちょっとこっち来い!」
がし、と腕を掴まれ、そのまま連行される。
竹倉さんが珍しく「森田!」と声を張り上げた。そんな彼に、私は軽く手を振る。
「あ、大丈夫です! ちょっとお話してきますー!」
「お前は黙っとけ!」
再度森田さんに怒られたものの、以降は大人しく引き摺られることにした。



