魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



ごめんね。
そっと紡がれた四文字は、今まで聞いた彼女の声の中で一番、優しさで満ちていた。


「…………嘘、言うなよ」


弱々しい震えが、椿様の喉から漏れる。


「うん、ごめんね。嘘ついた」

「え……?」

「本当は、二人に会いたかったんじゃない。私、椿に会いたくて会いたくてたまらなかった」


そう訂正した彼女の泣き笑いはどこか幼くて、けれども愛らしかった。
桜様が言い終わるや否や、つられたように椿様の顔が歪む。


「ほんと……桜は、嘘ばっか……」


せめてもの抵抗のように零して、彼が苦しそうに笑った。そしてその唇が、愛おしそうに動く。


「桜。……俺の方が、ずっと好き」


穏やかで柔らかい空気が流れていた。完全に部外者である私までそれにあてられて、ぼんやりとしていた時。
背後から足音が聞こえて、我に返った。

――いや、これ以上私がここに留まるのはさすがにまずいのでは?
二人の邪魔をしないよう、努めて静かに数歩ずつ下がる。そのまま元来た道を戻ろうと後ろを向いた瞬間、見覚えのある影がちらりと見えて、私は咄嗟に近くの植木に身を隠した。


「やっぱりここにいたんだ」