父親との対面を終えた藤さんが、気怠そうに息を吐く。
「奇遇ですね。私もそれだけは賛成です」
「はは、それだけって何。でもほんと、こんなことに金かけるくらいならもっと他にできることあるだろって思うよ」
そう語る彼の目は今日も深く沈んでいて、目の前に広がる煌びやかな世界を一つも欲していなかった。
馬鹿みたいだ、と彼は呟く。
「ここにある料理も、どうせ半分も食われずに捨てられる。そのゴミを、……そのゴミさえも欲しい人間が、いま世界に何人いると思う?」
「……貧困国の話ですか」
「まあ俺が今こんなこと言ったって、その人たちには何の影響もないんだけどね。言ってるだけ。口だけってこと」
難しいことを言う人だな、というのが正直な所懐だ。でもどこかで彼は、すごく慈悲深いのかもしれない。
山も谷もない会話をしていると、隣のテーブルからやって来た人に話しかけられた。
立食式なので、一つの場所に留まることはせずに、色んな人とコミュニケーションをとるのが好ましい。本当は知らない人と世間話なんて苦でしかないけれど、今日一日の我慢だ、と腹をくくった。
「百合ちゃん?」



