*
「あれ。髪伸びてる」
パーティー会場で私に会うや否や、藤さんはわざとらしく神妙な顔をして首を傾げた。
ダークグリーンのタキシードが良く似合っている。自分の見せ方を分かっているんだろうな、という感想が浮かんだ。
「……ええ。髪は長い方が好ましいと仰っていたので」
言いつつ目を伏せると、自分の毛先が視界に入って不思議な気分になる。
肩にすらかからない長さだった私の髪の毛だけれど、今日はウィッグをつけてロングヘアを偽っていた。
なぜわざわざそんなことをしたのかといえば、藤さんの父親からの第一印象を良くするために他ならない。
女性はお淑やかに、上品に。彼の父親はそんな古風な考えを持っているらしく、事前に藤さんから「その髪型はどうにかならないの」と疎まれていたのだ。
「ふーん。上手く偽装したね。一瞬誰か分からなかった」
「ありがとうございます」
一応お礼を述べると、別に褒めてないよ、と非常に憎たらしい答えが返ってきたので、それは無視することにした。
まず最初に、彼の父親に挨拶へ向かう。めかしこんでいったおかげか、反応はまずまずだった。
仲良く頼むよ、だの何だの、軽薄な決まり文句が右から左に抜けていく。私もそれを浅い笑みで曖昧に躱し、ひとまず休戦となった。
「パーティーってさ、この世で一番非生産的だと思うんだよね」
「あれ。髪伸びてる」
パーティー会場で私に会うや否や、藤さんはわざとらしく神妙な顔をして首を傾げた。
ダークグリーンのタキシードが良く似合っている。自分の見せ方を分かっているんだろうな、という感想が浮かんだ。
「……ええ。髪は長い方が好ましいと仰っていたので」
言いつつ目を伏せると、自分の毛先が視界に入って不思議な気分になる。
肩にすらかからない長さだった私の髪の毛だけれど、今日はウィッグをつけてロングヘアを偽っていた。
なぜわざわざそんなことをしたのかといえば、藤さんの父親からの第一印象を良くするために他ならない。
女性はお淑やかに、上品に。彼の父親はそんな古風な考えを持っているらしく、事前に藤さんから「その髪型はどうにかならないの」と疎まれていたのだ。
「ふーん。上手く偽装したね。一瞬誰か分からなかった」
「ありがとうございます」
一応お礼を述べると、別に褒めてないよ、と非常に憎たらしい答えが返ってきたので、それは無視することにした。
まず最初に、彼の父親に挨拶へ向かう。めかしこんでいったおかげか、反応はまずまずだった。
仲良く頼むよ、だの何だの、軽薄な決まり文句が右から左に抜けていく。私もそれを浅い笑みで曖昧に躱し、ひとまず休戦となった。
「パーティーってさ、この世で一番非生産的だと思うんだよね」



