ベージュとアイボリーの外壁、ダークブラウンの屋根。
半年でも、懐かしいという感情は芽生えるらしい。我が家は出てきた時と何ら変わりなく、そこに鎮座していた。

車から降り、玄関前まで来たところで尻込みしてしまう。


「お嬢様?」


どうかされましたか、と振り返ったメイドの稲葉(いなば)が、私の強張った表情を視界に入れて微笑む。


「……大丈夫ですよ。ご主人様も、奥様も……家の者もみんな、お嬢様のことを心配していましたから」


果たして、それはどこまで本当だろうか。彼女が嘘をついているとは思わないけれど、父と母が激憤しているであろうことは分かり切っていた。
特に母には昔から厳しく叱られることが多く――父が甘いからというのもあるんだろうけれど――、顔を合わせるのが憂鬱だった。

とはいえ、いつまでもここで日和っているわけにはいかない。私は意を決して、勢いのまま玄関の扉を開けた。


「――百合!」


瞬間、怒号のように名前を呼ばれ、肩が跳ねる。恐る恐る顔を上げれば、仁王立ちで腕を組む母の姿があった。


「全く、あなたって子は……! ちょっと私が家を空けた隙にこれだもの!」