魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



彼女の素直なところは本当に助かる。ひとまず危機を回避して、ほう、と息を吐いた。


「あら、お二人随分仲が良いのね?」


私たちのやり取りを「仲が良い」と解釈した桜様が、意外そうに目を見開く。
杏は途端、目を輝かせて私の肩に手を添えた。


「ええ! 学校でもよくしてもらってますの! 花――ええと、百合様はファンクラブもあるほど人気な方で」


それは言わなくていいよ!? 絶対にいらない情報だよ!?
いまだに本人がファンクラブなるものの実態を把握していないのだけども、存在自体は幻などではなかったようだ。


「……暑いから、移動しない?」


唐突に、蓮様が口を開いた。その瞬間、意図せず全身の筋肉が固まってしまう。

情けなくも森田さんに匿ってもらったあの日以降、結局蓮様とはまともに話せていない。
蓮様と桜様は、私があの時聞いた会話がまるでなかったかのように、至って通常通り過ごされていた。そのせいもあって、彼と向き合うタイミングが図れないともいう。


「そうですわね! 失礼致しました。さあ、こちらです」


杏の案内に従って別荘に足を踏み入れる。
既に先客がいたようで、各々懐かしさに顔を綻ばせていた。今日は中等部時代の集まりだそうだ。


「えっ、女?」