「それにしても驚いた。蓮が専属執事だなんて」


学校は夏季休暇に入った。
五宮家のサロンで、蓮様と桜様がお茶をする午後。そこになぜか私も同席している。

もともと久しぶりの再会ということで、お二人でお話をするとのことだったのだけれど、お茶を出しに赴いたところ、桜様に話しかけられたのだ。すぐに退室するつもりが、すっかり捕まってしまった。
せめて邪魔にならないようにと、蓮様の後ろに控える。


「女性の執事を初めて見たものだから。でも、随分お若いのね」

「あ、私はまだ見習いですので……今年から聖蘭学園に通いながら、こちらのお世話になっているんです」

「聖蘭? 私も休暇明けから編入するの。それじゃあ、同い年なのね」


ふふ、と柔らかく微笑んだ彼女が美しい。こんなに素敵な人と自分が同じ空間にいることが、最早信じられないくらいだ。


「蓮って素っ気ないから、なかなか大変でしょう。意地悪されてない?」

「え……!? いえ、とんでもありません! 蓮様にはいつも良くして頂いております!」

「それなら良かった。何かあったら言ってね。これからはあなたとも仲良くしたいわ」