嫌味なくらいあっさりと、その言葉は零れ落ちた。
ぷつり。自分の中で決定的に、何かがちぎれてしまった気がする。

手からティーポットが抜けていく。
けたたましく割れる音が耳朶を打って、それでもなお私は動けなかった。


「な、――佐藤、どうし……」


誰も悪くない。悪いのは、馬鹿なのは私。
だって色んな人に散々釘を刺されてきた。蓮様には婚約者がいて、いずれ結婚する。そして彼は次期社長として立派に五宮家を担っていくのだろう。

そんな単純明快で分かりきった未来予想図を提示されていたのに、どうして、私は。


「蓮様、何かいま物凄い音が――って、おい佐藤!? お前、何してんだよ!」


ばたばたと、大きな足音と共に森田さんがやって来た。彼に肩を思い切り揺さぶられ、ようやく頭が冴える。


「あ、も、……申し訳ございません……あの、ちょっと手が滑ってしまって……片付けます、すぐに」


しゃがみ込んで、蓮様の一番近くに飛んでいた大きな破片を回収する。それと同時に指を切ってしまって、森田さんに「バカ!」と盛大に怒鳴られた。


「割れ物を手で拾う奴がどこにいるんだよ! 掃除用具持ってくるから待ってろ!」