魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



自分でも知らぬ間に立ち止まっていたらしい。隣から聞こえた声で我に返る。


「あっ、いえ、あの……蓮様の瞳と同じ色で、すごく素敵だなと……」


咄嗟にそう弁解すると、蓮様が目を見開いた。苦しい言い訳だっただろうか。
しかし彼は「待ってて」と言い渡し、奥へ消えてしまった。

一人ドレスの前で、じっと考え込む。

今までこんな大人っぽい色とデザインのドレスは、着たことがない。ベビーピンクやオレンジ、白、そんな明るい色ばかり身に着けていた。お転婆だった幼少期は、すぐに汚してよく怒られたっけ。

何となく懐かしさに浸っていた時、足音が近付いてきた。


「お客様。ご準備ができましたので、どうぞ」

「え?」

「さあ、こちらへ」


店員の女性に促され、奥の部屋へ足を踏み入れる。そこは試着室なのか、大きな鏡張りの一室だった。
戸惑ったのも束の間。先程のドレスが運び込まれ、着用する流れになってしまい、蓮様はどちらに行かれたのだろうと焦燥に駆られる。


「あああの、すみません……! 私、ちょっと見ていただけで、買うことはできないんですが……」

「大丈夫ですよ。お連れ様がお客様にと、仰っていたので」

「え……?」