会場には既に賑わいが溢れていた。浮かれた顔で手を取り合う男女、胸やけがしそうなほど大量に並べられた料理。
軽く周囲を見回しても、知っている顔は見当たらない。時刻は既に午後五時を過ぎていた。


『命令、じゃない。パートナーは僕にして。……それが嫌だったら、来なくていいから』


数日前の自分の言葉を思い出して、思わず苦笑する。我ながらとんでもない発言をしてしまった。
でも不思議と後悔はしていなくて、あのまま彼女がどこの誰かも知らない人間と腕を組むのかと考えると、胸中は重かった。


『私はあなたの専属執事です! あなたのことを一番近くで、一番大切にしたいんです』


そっちが僕に近付くのはいいわけ? いつも遠慮なくずかずか入ってくるくせに。僕が近付くと、君はいつも困ったように、慌てて距離を取る。

何なの、本当に。むかつくし、意味が分からないし、なるべく波風立てないように過ごしたいのに。君のせいで全部めちゃくちゃ。考えるより先に、感情がどんどん先走る。


『いらないなんて、言わないで下さい。どうかあなたのお傍に、私を置いて下さいませんか』