彼に問われて気が付いた。
私はもう、茜さんと会う前提で話を進めていた。まだ不確かな約束のように、ふわふわとしているから。本当に彼は私を必要としているんだろうか。そう、思っているから。
ちゃんと覚悟は? 茜さんに見合う覚悟は、できているの?
「……茜さん」
「なに?」
「私が茜さんとお仕事を始めたら……私は、五宮家を出て行くべきでしょうか」
すぐにとはいかないだろうけれど、いつかの話。
ここにいるのは、あくまで夢を叶えるための手段にすぎなかった。私は執事になりたかったわけじゃない。少なくとも、最初はそのはずで。
「どうして?」
彼の質問は、酷く落ち着いていた。邪気のない、純粋な疑問。
「君が出て行きたいなら出て行けばいいし、いたいならいればいい。それとも、執事は副業禁止なの?」
「い、いえ……それはちょっと、分からないですけど」
「出て行けって言われた?」
「そういうわけでは、なくて……」
さっきからずっと、曖昧なところでばかり揺蕩っている。
こんなチャンス、二度とない。掴みたいと思うのに、その後どうなってしまうかが分からなくて怖かった。
「君が出て行きたいって思ってるんじゃないの?」



