私が述べると、茜さんは「ああ」と納得したようだった。


「そういえばそんな時期か。懐かしいね」

「え? もしかして、茜さん……」

「うん。僕も聖蘭通ってたから」


ここに来てまた初耳情報である。彼に関しては謎が多すぎて、いくら知っても知り尽くせないのでは、と錯覚してしまう。


「じゃあ僕が迎えに行くよ」

「えっ」

「後半は適当にダンス踊るだけでしょ、あんなの。別に抜け出そうが誰も気にしないよ」


そう告げる彼だったけれど、私は経験がないので何とも言えない。まあでも、楓たちだって私が少し顔を出せばそれで満足してくれるだろう。
せっかく茜さんが申し出てくれているのに、これ以上私の都合で振り回すのも気が引けた。


「ええと、じゃあお願いします。どっちみち長居するつもりはなかったので……」


素直に頷いた直後、通話口の向こうがしんと静まり返る。何だろう、と不思議に思って口を開きかけた時。


「百合。それってもう、イエスって言ってるのと同義だよね」

「え、」

「僕、本気で君と組みたいと思ってるよ。迎えに行くからね。いいの?」