魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



相変わらずだ。マイペースで、自信家で、飄々としている。
得意げな口調から一転、茜さんは商談を持ち込むサラリーマンのように、真面目な声を出した。


「急かすつもりはないって言ったけど、あれ撤回していいかな。僕、せっかちなんだよね」

「何となくそんな感じします」

「ああ、そう? なら話は早いね。つまり、二週間以内に返事が欲しい」


むしろ最後に彼に会った日から、一か月経っている。あまり引き延ばすのも不誠実だ。
私は自分に言い聞かせる意味も込めて「二週間ですね」と繰り返した。カレンダーを見る。七月十七日まで、待ってくれるということでいいんだろうか。


「もしイエスって返事がもらえるんだったら、直接会って話したいんだけど。その日のうちに色々と決めちゃいたいから」

「……分かりました。じゃあ十七日の、」

「あー、ごめん。その日はちょっと予定あるんだよね。前の日とか空いてる?」

「はい。十六日は――」


了承の意を伝えようとして、はたと気が付く。
確かその日はパーティーだった。気は進まないけれど、楓と三園さんに「欠席はだめ」と強く説得されていたのだ。


「すみません。十六日は、創立記念パーティーがあって……」