魔法をかけて、僕のシークレット・リリー




日が経つにつれて、蓮様の表情は暗くなるばかりだった。

大変失礼ながら元々表情豊かな方ではないけれど、それなりに会話や態度からその日の機嫌は測ることができる。しかし最近の彼に至っては、それも困難を極めた。
揺れることのない水面のように、それでいてどこかぼんやりと。来る漠然とした不安を抱えた彼の目が、私は気がかりだった。


「はあ……」

「何だ佐藤、テストの点数悪かったのそんなに引き摺ってるのか?」


夜のミーティング後。意図せず零れてしまったため息に、草下さんが容赦なく傷口を抉ってくる。
いや、もちろんテストは散々だったのでそれも憂鬱だったのだけれど、終わったことはどうでもいい。


「いえ、最近蓮様のご様子が……って、何で草下さんが私のテストの点数知ってるんですか?」

「森田さんから聞いたけど。なんか色んな人に言いふらしてたわ」

「そうですか。有益な情報ありがとうございます」


きっと返却された答案を勝手に盗まれて盛大に笑われた時だ。あとで絶対に後ろから技かけてやる。

一人復讐に燃えていると、草下さんは顎に手を当て思案顔になった。


「確かに蓮様、最近ちょっと雰囲気が違うよな」

「やっぱりそう思います?」

「ああ。俺でも分かるくらい」