ふう、と目を伏せた楓は、すぐに私を指さして言った。
「ほらそこ、げっそりした顔しない! 夏休み前の一大イベントだよ!?」
げっそりとは失礼な。抵抗を込めて頬を膨らませるも、「冬眠前のリスみたい」と妙な例えで返されてしまった。
準備が面倒だというのもそうだけれど、愛想笑いを浮かべ続けることが本当に苦痛なのだ。何が楽しくてさほど仲も良くない相手と世間話をしなくてはいけないのか。
「パーティーってさ、別に強制じゃないよね?」
私のマイナスな発言にすぐさま反応したのは、三園さんである。
「ええっ! もしかして花城様、欠席なさるんですか……?」
「うーん……できればそうしたいんだけど」
本来、創立記念日は祝日扱いで授業はない。パーティーは開催こそされど、入退場は自由なはずだ。
「そんな……花城様と踊りたいと言っている方は沢山いらっしゃいますのに……」
「一応聞くけどそれって女の子?」
「ええ。ファンクラブの皆様ですわ!」
「だと思った」
もういっそ男装しようかな、と血迷い始める午後であった。



