身を縮め、極力彼に触れないように気を付けながら会釈をする。蓮様のいる右側だけがやけに熱く感じた。
しばらく沈黙が続いて、ようやく私は口を開く。
「蓮様は、『AKANE』という男性モデル、ご存じですか?」
「まあ……名前は聞いたことあるかな」
想定外の質問だったらしく、蓮様は僅かに面食らった様子で肯定した。それが一体どうしたんだ、と言いたげな雰囲気である。
「実は、クラスメートの兄がその『AKANE』で……先日お家に伺った際、お会いしたんです。それで、」
どこまで彼に打ち明けるべきか悩んだ。自身の寝間着の裾口を握り、思考を巡らせる。
「彼の手掛けるメンズコスメブランドの広告モデルを、やらないかと……言われまして」
もう一つの方は、言い出せなかった。
ビジネスはギブアンドテイク。モデルの件を蹴ってブランド設立、とはいかないだろう。彼の誘いを受け入れる時はすなわち、両方を許諾する時だ。
進んだらきっと、もう戻っては来られない。
「は? モデルって……君が? メンズの?」
「はい」
「何で?」
「それは私もよく分からないんですが……こんな身なりですし、男っぽく見えるってことなんじゃないかと……」



