蓮様も寝付けないでいたのでは、などという稚拙な考えが、途端に恥ずかしくなる。
彼は私の問いかけに軽く頷き、ベッドに腰を下ろした。
「どうしたの、わざわざ。何かあった?」
心なしか、普段よりもトーンの落ち着いた、優しい声に思える。なぜか急にどぎまぎして、慌てて言い訳のように答えた。
「あ、特にこれといったことは……その、蓮様のお部屋の前を通ろうとしたら電気がついていたので、心配になりまして……」
「別にいつもこの時間は起きてるけど」
「えっ、さ、左様でしたか……失礼致しました」
時刻は日付が変わる頃である。彼は普段から夜遅くまで勉学に励んでいたというわけだ。
それなら本当に私は邪魔なだけだったな、と思い至り、再度謝罪をしてからドアに手を掛ける。
「眠れないの?」
「え、」
蓮様の声に振り返れば、真っ直ぐな瞳に捕まった。何となく、逸らすことは許されない気がしてそのままでいたら、彼が言い放つ。
「今日の君、帰ってきてからずっとそわそわしてる。何かあったでしょ」
「それは……その、」
「凡ミスして森田に怒鳴られてたし」
「うっ……お見苦しいところをお見せして、申し訳ございません……」
蓮様に見られていたとは。情けない。
項垂れた私に、なおも彼は追及をやめるつもりはないようだった。ゆっくり息を吐き出し、言葉を重ねてくる。
「寝付けないくらい、大事なことなんじゃないの」



