魔法をかけて、僕のシークレット・リリー




その日の夜はなかなか寝付けなかった。
数時間前の茜さんの言葉が、ずっと頭の中をぐるぐると回っている。

彼の口調からして揶揄っているようには思えなかったけれど、だからといってすぐに信じられるほど現実的な話でもない。

このままベッドの中で寝返りを打っていても、質のいい睡眠はとれなさそうだ。
無理やり目を閉じるのをやめ、私は静かに部屋を出た。何か温かいものでも飲んで気持ちを鎮めようと、ひとまずキッチンへ向かうことにする。

しかし蓮様のお部屋の近くに差し掛かった時、そのドアの隙間から光が漏れていた。こんな時間まで一体何をしていらっしゃるのか。
迷った挙句、ひょっとして私と同様寝付けずにいるのではと思い、声を掛けることにした。


「蓮様、夜分遅くに申し訳ありません。佐藤です。まだ起きていらっしゃいますか?」


家の中はしんと静まり返っている。
努めて小声でノックと共に訴えかけると、数秒経ってドアが開いた。


「……どうしたの」


パジャマ姿で登場した蓮様が、少し驚いたように尋ねてくる。淡いブルーのシルク生地がとても肌触りの良さそうな、高級感ある寝間着だ。

私が口を開きかけた時、「廊下に声が響くからとりあえず入って」と促された。

彼の机の上には分厚い本とノートが広げられている。今の今まで取り組んでいた形跡があった。


「こんな時間まで勉強なさっていたんですか?」